木枯らしの侘しい季節に、人生において象徴的に思える五月の詩は、むしろ
一年をふりかえる今こそ、ふさわしいのかもしれない。
若葉と花のときは、遠いけれど確かに存在していた。
去りゆく五月の詩
われは見る。
廃園の奥、
折ふしの音なき花の散りかひ。
風のあゆみ、
静かなる午後の光に、
去りゆく優しき五月のうしろかげを。
空の色はやはらかに青みわたり
夢深き樹には啼く、空しき鳥。
ああいま、園のうち
「追憶」 は頭を垂れ、
かくてまたひそやかに涙すれども
かの 「時」 こそは
哀しきにほひのあとを過ぎて
甘きこころをゆすりゆすり
はやもわが楽しき住家の
屋を出でゆく。 三木露風 ~ 後略 ~
蕾をもった木瓜の枝は冬囲いのなか、寒さにとらわれて 2007/05/22 撮影