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川に寄せて …

或る会報に寄稿させて頂いたことがあります。1990年代、「花に寄せて」、
「川に寄せて」、そして 「パリ近郊の思い出」 の三篇を綴りました。
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Sous le pont Mirabeau coule la Seine …     - Guillaume Apollinaire -
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ミラボー橋の下をセーヌ川が流れ
   われらの恋が流れる
  わたしは思い出す
悩みのあとに楽しみは来ると

   日も暮れよ 鐘も鳴れ
   月日は流れ わたしは残る

G.アポリネール (1880~1918)
「ミラボー橋 」 堀口大学 訳 より
  セーヌ川  199*/09/17 撮影

先日、シンポジウムで、「北上川河口地域ヨシ原の事例」をお聞きして、川や橋への
郷愁に誘われました。関西の先生方の講義が続き、震災前の神戸で住吉川沿いを
そぞろ歩きした日が、懐かしくなりました。

ふと気分転換に読んだ藤沢周平の時代小説には、川を舞台に橋が象徴的に描かれて
います。 『闇の穴』 新潮文庫 解説にも心打たれました。もし私が著者でしたら、
作家冥利に尽きるだろうと思われる内容です。ご一読をお勧めします。
発刊当時(昭和60年7月) 時事通信社文化部長でいらっしゃった文芸評論家の
藤田昌司氏によるものです。自分の読書は上澄みの塵にもみたないと思いました。

所々の切り取り引用では申し訳ないのですが、『なぜ、川なのか。なぜ、橋なのか。』
という文以降を、抜粋紹介させて頂きます。(…は略している部分です。上掲書P258~)

『川はわれわれ日本人にとって、無常観の象徴なのである。 … 川は人の世の無常の
表象として、われわれの内部に宿っているといえる。 … そしてまた、川はわれわれ
日本人にとって、断念の場でもある。 … 川は江戸時代まで、生活そのものであった。…』

このあと藤沢文学を柱に、橋について言及されています。「面影橋」の由来には、私も
愕然と致しました。
by lumiere6 | 2006-11-06 23:58 | 文学、芸術 …
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